| 以上のようなことから、徒歩帰宅はマイナス要因もはらんでいることが分かる。これまでは帰宅困難に陥らないような対策が当然とされてきた。しかし、これで対策は万全といえるだろうか、また、全員が帰宅すべきなのか。そうではなさそうだ。真に帰るべき人、帰らずにその場で事業継続にあたったり、その地域の救援・復旧活動に貢献する人などと振り分ける発想が必要になっている。
では真に帰宅すべき人はどのような人か。地震による犠牲者の家族や重傷者、家族の安否がまったく分からない人などだろう。一方、残るべき人は家族と連絡も取れ、自宅も被災せずに済んだような人だ。
家庭では大災害時には帰宅が出来ないという覚悟を持つ必要があることや家族にそのことを伝えておくのが必須だ。大災害のため家族がばらばらになってしまった時の再会場所を決めておくことも大事だ。また、自宅の耐震補強を行ったり、体の不自由な家族がいれば、そのケアを誰がどのようにするかなどの話し合いも必要だ。
企業においては家族と連絡も取れ、負傷もせずに自宅も被災せずに済んだような人に残ってもらい、社内で事業継続を担ってもらうことができる。さらには地域の救援活動の担い手となるという方法もあるだろう。その企業に広大な敷地があれば、避難所や宿泊施設として提供したり、備蓄品の一部を提供するなども大きな貢献となる。災害時は消防や警察、行政だけでは人手が足りないだけに、共助の持つ意味は大きい。企業側もそうした社員に対し食料や宿泊に備えた毛布などを用意しておいてはどうだろう。こうした整備にかかる費用は事業が継続できずに発生するマイナスのコストに比べればはるかに小額と思われる。
一方、帰宅すべき人の中でも自力で難を逃れるのが困難な家族がいる人に対しては会社側から支援の人間を派遣するなどしてもいいだろう。こうした帰宅すべき人の数は前述の内閣府試算をもとにすれば、死者、負傷者、重傷者を足しても約25万人で、東京都の人口約1200万人に比べれば2%程度だ。
このように、帰るべき人ととどまる人を峻別できれば、社会全体が円滑に機能するため災害から早急な復旧が可能となろう。文部科学省の調査(※4)によると、「一斉に帰宅を開始した場合、混雑が発生し15時間後以降も多くの人が帰宅できないが、地震発生から3時間後まで分散して帰宅する場合、混雑率が低下し、5時間後の段階で帰宅できる人は67%」という。こうしたことからも、今帰宅しようとすることが方策としていいのかどうか見極めたうえでの行動も重要になってくるように思われる。
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