rescuenow.net   ホームへ
みゃるの避難日記 三宅島から遠く離れて

   

7-2. 雄山再噴火

 

 受話器を持ったまま、玄関の外に出て、雄山を見る。
 かろうじて見える雄山の上端に、濃い灰色の柱が立ち上る。
柱の先はすぐに崩れて、ブロッコリーのような形になる。柱の先が崩れはじめるのと、ほとんど同時に、煙幕のような、こちらは、輪郭のはっきりしない雲のような物が、山をなめるように降りてくる。
まるで、舞台装置のドライアイスのよう。山肌を降りてきた雲は、あっという間に目の前の他の景色を塗りつぶし、さっきまでの夏の空気や葉っぱを曇らせて、庭を更に薄曇りにした。
 まるで、映画のような、絵のような、噴火の景色だった。
漫画の絵に出てくるような、そのまんまだったので、本当の噴火も、こんなもんなんだ、という感じがした。
 外から帰ってきた主人と、都道の方に行って、雄山を見に行くことにする。
都道沿いでは、所々、雄山がよく見えるところに人が集まっていて、「よく見えるよー。」と、呼び寄せてくれる。
神着漁協の前に行くと、みんな集まっていた。

 
「すげえぞ。」
「ようやく本当に噴いたねぇ。」
「ほらほら、よく見て。あそこ、石飛んでるよね。」
「だからよ、さっさと噴いちまえば、いいんだよ。」
「いや、これでやっと終わるかな。」
 大きく噴く度に、「おおー!」というどよめきが起きる。
でも、怖がっている人が・・・いない。
「たまやーとか言っちゃいそうだよな。」

「やめてよね。もう。」
「いけいけ、ほら、もっと噴いちまえ。」
 しばらく経つと、
「あれ?こんな所で何してるの?」
「いきあわねえな。」
「東京行ってたの?」
「わぁ、そのカメラすごい。すごいの持ってるんですねぇ。」
「道具ばっかりすごくってもよ・・・」。
目の前の噴火と関係ない会話が始まる。
 
 取りあえず、場所変え。戻って、高橋自動車サービス工場の前。
子供たちが、事務所の屋根にのぼって山を見ている。
ここでも、噴く度に歓声(いいのか・・・?)が上がる。
久しぶりに、みんなに会って、留守をしていたことと、帰ってきたことを知ってもらって、おしゃべりして、すかっと楽しい気分で、家に戻ることにする。
それにしても、なんでこっちには全然灰がないのかなぁ・・・。
同じ神着なのに。もー。みんな、家の方にもたまには来てよぉ。

     
  帰途、正大ストアの前で、坪田側の空に愕然とする。空に黒い縦縞の雲。
海から立ち上っているのとは違う。見たことのない空と雲の風景。
黒い雲が縦に立ちのぼるだけで、こんなに異様な光景になるとは。
 家に戻って、島下の友人から電話が来た。

さっきの雲、あれは雲ではなくて、噴煙と降灰だったのかもしれない。
ちょうど、その頃、島下では、ものすごい降灰だったという。
こちらからは、ずいぶん遠くに見えたのに。
 
夜、その島下の友人達が、我が家に避難してきた。
申し訳ないけど、同業者である友人が、家に泊まりに来るなんて事、なかったので、なんだかうれしい。
 
島下と、下馬野尾には、避難勧告が出ているらしい。
都道も、観光ホテルから役場までが通行止めになってしまった。
ここは、ぎりぎりセーフ、というところだが、車で走ると、道路にはっきりタイヤの跡が残る。

観光ホテル側では、轍ができるほど降灰が多い。
 バーベキューをするときに使う、庭の照明をつけると、まるで、雪のように、灰が降っているのがみえる。
 降りが弱くなったとき、外に出て、空を見上げると、空に、噴煙が帯状にできているのがわかった。
星が見えているところと、そうでないところ。
風向きによって、灰は降るらしい。
 粉のような灰が降っていたと思ったら、突然、轟音と共に、雨が降り出した。
時間は短かったが、灰に比べ、暴力的な降り方だった。
 友人は、家と、残してきた外猫たちが心配だろう。
「もう、猫灰だらけって、こういう事よ。」なんて言ってた。
 こんなに近くなのに、こんなに大きな違いが出るとは。
 寝しなにふと思った。

観光ホテルから坪田側が、通行止めになっているということは、
美茂井もだ。
いつも、世話になっている人達は、どうしているんだろう。
やっぱり、老人福祉館にいるのだろうか?
今頃どうしているのだろう。
 

(野田理恵)

  back index

 

閉じる
 
rescuenow.net:Copyright (c) rescuenow.net Inc. お問い合わせ プライバシーについて