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荷物を全部詰め込み、避難カーと倉庫カーの発進準備をして、猫のキャリイを取りに戻ったときに、電話が鳴った。
「美茂井地区は、自宅で待機するように。」
避難所のある伊豆地区の方の降灰がひどいらしく、車の移動が危険なのだという。
たしかに避難先の中学校は、入り口が急な下り坂で、その後、駐車場に入るために、すぐに、かなりの上り坂になる。
噴火の様子とテレビに映る阿古の様子では、今回は、避難所への移動が
早まっているだろう。車が集中しているかもしれない。
取りあえず、噴火は収まっているようなので、「ラッキー!!」と思うのと同時に、気が抜ける。あわてて風呂に入って、すぐにバタバタしたので、返って汗だくになってしまった。おまけに、夕飯がワカメご飯・・・。
何もしなければ、よかった。ワカメご飯は避難の時だけにしておきたいのに。
ああ、それに猫。せっかくキャリイに入れたのが惜しいけれど、入れっぱなしにしておくわけにもいかないので、解放。
キャリイには、なかなか入らないくせに、いざ、出そうとすると、なぜかノソノソしたり、そのまま座り込んだりして、これまた、なかなか出ようとしない。いったい何を考えているのだろう。
テレビをつけると、たまに今日の噴火の映像が映る。
クーラーをつけて、一息ついて、気を取り直して夕飯にする。
冷凍にしておいた餃子。ホットプレートを出して、ミニ餃子パーティー。
餃子には、本当は白いご飯の方が合うんだけど。
何か気の抜けた、中途半端な夕食。自分が住んでいるところの大噴火の様子がテレビで何度も流れる。テレビの映像になると、なんだか、映画のようですごい。
すごいんだけれど、その真下で、私達はホットプレートで餃子を焼いて食べている。避難所に行かずに済んだことをラッキーだと思っている。
同時に、避難所に誰がいるのだろうか、と、気になる。
主人は、「今日の噴火は、このデジカメじゃ取れなかった。噴煙が大きすぎて、ファインダーに入らない。」という。そして、「このあとのために、デジカメにくっつけられっるワイドのレンズが欲しい。東京だったら、けっこうどこでも売ってるんだよなぁ。」
「なら、由美に頼んでみる?デジカメのことわかるかな?」
「買いに行く時間あるかなぁ。」
「買った途端に、そういうのって、使う機会なくなったりするんだよね。」
「それはそれで良いじゃん、噴火収まるって事で。」
あのねー、一夏客いないのに、そんなもん買う余裕あるのかいな?
何本か電話がかかってくる。
大抵「なんで避難していないの?」と、まるで、幽霊にでも逢ったように言われる。
「いやぁ、ちょっと出遅れたら、避難に移動する方が危ないって感じになっちゃって。」
「大丈夫なの?」
「いや、申し訳ない、くつろいでいます。」
そんなやりとりが繰り返される。
だけどね。避難してると思ってるんだら、電話してくるなっちゅうの。
夜の暗さと通行止めで、自分の目で確かめることはできないが、今回の噴火は、結構大きいようだ。避難も規模が大きそう。
明日以降、また断水されるだろう。家にある、ありとあらゆる水が入るものに、水を貯める。透明衣装ケース、ポリバケツ、ダイビング器材洗い用の水槽、おけ、厨房にある全ての鍋。生ビールサーバーの冷却用タンク。
家には、本当は、天水槽にする予定の物体がある。
家を新築したときに、東京の設計士と建設業者に、天水槽は必需品だからと、お願いしたものだった。
それなのに、なぜか、天水槽は、ただおかれただけで放されてしまった。
他にも何カ所か、工事途中で投げられたところがある。
最後、ちゃんとやって欲しいと申し入れたら、逆に脅されて、泣き寝入りさせられてしまった。
この家が建って5年、毎日毎日、恨みに思っていたが、断水措置が執られると、他の家と違い、間抜けな悪あがきをしなくてはならない。
そのたびに、その思いは強くなる。
夜半になって、静かになった。外がしーんと静まりかえって、不気味だ。降灰のせいなのか、地震のせいなのか、虫の声も聞こえない。
明日の朝になったら、どうなっているのか、わかるのだろう。
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