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2階の窓から、受話器を持ったまま見ていた噴火。
今までとは、ちょっと様子が違う。空を覆い尽くすような大きな噴煙が、ここから見て、北の方向の空を飲み込んでいく。噴煙は、薄いグレーだけど、陰になった部分なのだろうか、そういう色なのだろうか、濃淡の濃いところは、不気味な様相になっている。
今までのブロッコリーのような、噴火らしい噴火の絵ではない。
空に三宅島の中身が全部吐き出されてしまったような、
そんな雲とか煙とは言えない物体が、夕方の空を塗り潰して広がる。
これまでの噴火でいつもあった、山肌をなめるように降りてくる噴煙は見えない。
こちら側に降りてこないから見えないだけなのかもしれないが、噴煙は全部が上空に上がって、上空でそのまままとまりながら大きくなって、島の北側の空をどんどん覆っていくように見える。
この様子だと、今回、大降りになるのは、伊ヶ谷の方だろうか。
細い村道の急坂の多い所だ。避難が大変だろう。
できれば、灰が降って欲しくない地区だ。
こちらに来るようには見えなかったが、灰が降ってきた。
周りの景色は暗くはならない、量は少なそう。
あわててベランダから部屋に入る。
また避難だろう。準備しなくてはならないことと、優先順位を考える。
まず、風呂を沸かす。
次に、炊飯器のスイッチを繰り上げて入れる。早炊きにする。
風呂が沸くまでの間、簡単に調理できるおかず類を探す。
避難カーは、準備万端になっている。
玄関口には、車に乗せっぱなしにしておけない物がいくつか。
これは、今の内に積んでしまう。猫は一番最後に乗せる。
今日の内に、猫のブラシがけをしておけばよかった。
ボーっとしていたことを後悔する。
主人が帰ってきた。揚げ物が途中だったので、主人に先に風呂に入って準備をしてもらう。私は、炊きあがってすぐのご飯に、ワカメを混ぜ込んで、ワカメご飯を3パック作った。本当は、すし飯の方が保つのだろうが、今回は具の解凍が間に合わない。
本格的に灰が降りだした。テレビの映像は、ここからではわからない三宅の別の場所の様子を映している。阿古の方がすごい。どこを撮影しているのか、場所が、どこなのかわからないぐらい、すごいことになっている。
風呂上がりの生乾き(いや、ホントは、ビショビショ)の髪は、なんか返って汚れそうで嫌だけど、そうも言っていられない、猫をとっつかまえて、キャリィに入れなくては。
荷物をまとめて、「一番最後に猫」、と、もう一度シュミレーションしたところで、避難の放送が入った。
ここで、気になることがあるので、電話をする。
「家から、1本下根崎側のMさん、いるのかな?」「いや、ちょっとわかんない。」Mさんは、独り暮らし。車の運転もしないので、家にひとりでいる可能性がある。
避難所に行くときに、拾って行ければと思った。
もう1週間ぐらい前になるだろうか、正大ストアの前に出る家の前の村道を歩いていたのを見たような気がした。気がしただけで、あまり自信はない。
ここの所、曜日や日にちの感覚が、麻痺しつつある。
ちょうどその時、別の人から電話があったので、聞いてみると、「2〜3日前に、船に乗るの見たよ。娘の所行くとか。」という話。
一応、Mさん宅に電話はかけたのだが、出ないので、大丈夫らしい、ということにする。消防団の方が各戸の把握は確実だから、後は任せることにする。
(23-3へつづく)
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