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三宅島・雄山の噴火で火砕流の被害にあった神着地区にあるペンション、SNAPPERSを (スナッパース)ご主人と経営されている、みゃること野田理恵(のだ りえ)さん。 ペンションが火砕流に直撃されるという予期せぬ災害にあって、その状況を冷静に インターネットで発信し続けたみゃるさんに、雄山での出来事を綴っていただきます。
   

23-1 大噴火

 


特にやることもなく、昨日の夜、思うように眠れなかったせいもあり、ボーっとしたまま夏の日が高くなる。

いつも我が家に郵便を配達してくれる人は、降灰で、バイクが滑り転んでしまったことがあったそうだ。ここの所、神着では、さほどの降灰はないような気がするが、バイクのような乗り物にとっては、少々でも厄介だろう。

昔、実家の方では、雪の日、郵便配達の赤いバイクのタイヤに、チェーンが巻かれているのを見て、自転車通学だった私は、「自転車にもチェーンがあればいいのに」と思ったものである。

火山灰のスリップ防止には、チェーンは役に立たないのかな。
今日は、恐るべし郵便局、なんと、チルド郵パックで、カニが届いた。
真夏に、なぜカニ?というより、この状況でもチルド郵パックなんて、贅沢なものが来るのか?という驚き。

そういえば、6月27日、一番最初の噴火騒ぎの翌日も、何事もなかったかのように、でかい箱のチョコレート詰め合わせがチルド郵パックで配達されたっけ。
これは、その前に、自分で注文しておいたものだったが、当時、家にすし詰めになっていたマスコミ各社の方々の失笑を買ってしまった。
なんといっても箱にチョコレートと大書してあったので、隠しようがなく、神妙になりようがなかった。

さて、冷蔵庫には、水の入ったペットボトルがいっぱい詰めてある。
冷凍庫もストッカーも、水入りのペットボトルががぎっしり並べられていて、微妙に膨らみながら凍っていた。

何のためかというと、断水と停電に備えて、である。
井戸(天水槽)を持っていない家の場合、断水にはある程度備えなければならない。
でも、この時期、飲料用の水は汲み置きしておくこともできない。
それで空きペットボトルに詰めて冷蔵、なのである。
冷凍庫とストッカーに詰まっているものは、停電後は、冷凍庫の保冷剤として、溶けてしまったら、水として使う。

冷凍になっている食品は、できるだけ食べるようにがんばっているが、何しろ、7月に入ってすぐの合宿を当て込んで仕入れてしまっただけに、2人だけでの消費は、かなりキツイ。
それでも最近は、だいぶ、ペットボトル保冷剤が入るようにはなったのだが。

小さい冷蔵庫2台は、既にペットボトル専用になっている。
だけど、こんな備えって、役に立つんだろうか。
なんか、あやしいけど、まあ、ないよりはマシだろう、ということで。

取りあえず、今夜の夕飯は決まっていたので、カニは冷凍。
もしも、停電になったとき、冷蔵庫に入れた状態と、冷凍庫で凍った状態とでは、寿命が違うから。

「今頃、どうなっているのだろう。」
ぼんやりすると、すぐに、心が東京での今日の先生の葬儀の方に行ってしまう。
お葬式がどんなものなのか、全く、何一つ、想像できなかったが、先生はもう帰ってこないということが、少し飲み込めるような気がした。
「ちょうだい、ちょうだい」とせがんで、もらってきてしまった新島ガラスの小鉢。「いわさきちひろ、好きでしょ?」と分けてくれた絵とカード。形見って、こういうものなのか。
こんな思いで、手に取るなんて思いもしなかった。
先生からもらった品物は、先生とみんなと一緒に、楽しい時間をこの家で過ごすために、もらったつもりでいた。

主人は、朝から阿古へ灰下ろしに行っていた。
私はテレビをつけたり消したり、夏の空を眺めたりしながら、目的のない家事を続けていた。

電話が鳴った。時間からいって、仕事が終わった主人だろう。
別に出なくてもいいかな、と思いながら、受話器を取ると、「今、伊豆の駐在の前にいるんだけど、すごい、ものすごい噴火している。」
聞きながら、窓辺から雄山を見上げると、噴火というより、空が真っ暗になっているように見えた。視界が広い2階に移動して、ようやく、雄山と噴煙がわかった。噴煙が大きすぎて、1階の窓からでは、全体が見えなかったのだ。
「これから伊豆岬で写真撮っていくから。」そう言って電話は切れた。

(23-2へつづく)

 

 

(野田理恵)

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