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三宅島・雄山の噴火で火砕流の被害にあった神着地区にあるペンション、SNAPPERSを (スナッパース)ご主人と経営されている、みゃること野田理恵(のだ りえ)さん。 ペンションが火砕流に直撃されるという予期せぬ災害にあって、その状況を冷静に インターネットで発信し続けたみゃるさんに、雄山での出来事を綴っていただきます。
   

21-2  ふるさと味覚館

 
ふるさと味覚館につくと、なんと駐車場が、すっかりきれいになっていた。
降灰が全くない状態って、こうだったのか・・・。
灰がないアスファルト、それがどんなものだったのか、忘れていた。
広い広い駐車場なので、圧巻。
灰まみれの汚い車、乗り入れるのが申し訳ないようだった。

親方はもう中で待っていてくれた。ふるさと味覚館の中に入るのははじめて。

ずっと昔、オープンの頃、閉店しているのを確かめて、中をのぞいたことはあったけれど。その時、『メロン 400円』という張り紙だけが壁にあって、なんか「?」な気分になった覚えがある。

『メロン 400円』の面影は全くなく、親方が見せてくれたメニューには、どれを頼むか悩んでしまうような品揃えになっていた。
親方おすすめの『冷やし中華』にしようかな。冷やし中華って、自分では作ることがあっても、外で食べたことはないかもしれない。
その他に、野菜炒めや餃子も。働いていないのに、こんなに贅沢していいのかしらん。

 冷やし中華が来たところで、親方が「あれ?」と言う。
「この前の冷やし中華と違う・・・」
「おれがこの前頼んだときは、どっさり鶏肉がのっていて・・・」
親方は鶏が嫌いなのである。たぶん、だから、今日は違うものを頼んだのかな。

いぶかしがって、親方は、前の冷やし中華を一生懸命説明してくれた。
いかに鶏肉がたくさんのっていたか。真剣なので、笑いを我慢したけれど、おかしかった。親方、きっとそれは、ここのママが、親方のためにサービスしたんだよぉ。

今日の冷やし中華は、ハムとキュウリがどっさり。
キュウリなんて、どこから来たのだろう?島の中の畑のキュウリは、ほとんど全滅してしまっただろう。
灰が降っても元気なのは、里芋と、芝草ぐらい。島の中になければ今朝の船?台風直後の昨日、生鮮品を船が積んだだろうか?いずれにしても、新鮮でしゃきしゃきの、みずみずしいキュウリは、今ここでは、とても貴重で贅沢なものだ。

窓の外に青い海と青い空が広がっている。
ここから見る海は、三宅の海というより、カレンダーなどの写真で見る地中海のよう。ちょうど、黒い岩が見えないからかもしれない。
灰で、なんとなく白っぽくなっているせいかもしれない。
なぜ、こんなに美しいのだろう。

お客さんがいないお盆の中日。
三宅島の夏は、ずっとこうだったのかもしれない。
私は、朝から晩まで厨房にいたから・・・。
外に出るのは、買い物に行くときぐらい。畑に行って、野菜を収穫するのは、朝一番だったから、真夏の昼間の三宅をあまり知らなかった。

もっとも、真夏は観光客でごった返して、こんな風景ではない。
風景を見る方の気持ちの問題が大きいのだろうが、とにかく、追いまくられるような気ぜわしさと、猥雑さを感じていた、去年までの夏。
私にとっては初めての、三宅島にとっては久しぶりの、静かな夏なのかもしれない。

 「静かな夏」。そんな風に感じるのは変?
考えてみれば、雄山は噴煙を上げていて、またいつ避難になるかわからない。
でも、窓の外に広がる景色、灰取りをしてきれいな駐車場、美味しい食事。
顔を合わせる人は皆がんばっているし、ハイビスカスの花も次々に咲く。
夏を楽しむ余裕がなかった今までの夏。8月の空も海も、ゆっくり眺めることなど、全くしたことがなかった事に今更気づく。

夏を楽しみなさい、島を楽しみなさい、ということなのかなぁ。
でも、1度だけにして欲しいなぁ・・・。毎年だったら店が潰れてしまう。

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(野田理恵)

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