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身近な危機管理
アメリカのロードアイランド大学でウイルスについて研究をされている竹田さん(現在は、東京大学在勤)に日々の危機管理についてコラムを書いていただいています。

■2004.5.27 Vol.47
「マダニの季節」

アメリカのロードアイランド大学でウイルスについて研究をされている竹田さんに日々の危機管理についてコラムを書いていただいています。
 

マダニの多く見られる季節になりました。

マダニはいろいろな病気を運んでいます。アメリカなどではライム病というスピロヘータ菌の感染による疾病に毎年何千人という人が苦しめられています。またペット、特に犬が感染して死んでしまうという話もしばしば聞くことがありました。この病気もこのマダニに刺されることによって惹き起こされます。ヨーロッパやロシアでは、ダニ脳炎という疾病があります。これはこの地域の数%のダニが持っているダニ脳炎ウイルスを同様に刺されることで血液に移され発病し、悪くすれば命を落としてしまう危険な病気です。

マダニは、小さな節足動物です。見た目はゴマのような奴ですが、吸血すると大豆よりも一回り小さい程度まで体に血液を吸い込んで脹れ上がります。この吸血が始まる直前に唾液を人間の体に流し込んで、血液が酸素などに触れても固まらないようにします。この唾液の中にときどき問題の病原体が含まれるのです。

マダニが媒介する病気は、上記のライム病やダニ脳炎のほかに、バベシア原虫など寄生虫の病原体などもあります。これらの病気は海外の地域によっては非常に多く報告がされていますが、日本でももちろん存在しています。ただし、日本ではあまり診断などが他国の流行地域に比べて慣れていないために、正確に行われていない恐れがあります。そのため、もし妙な虫に噛まれているようならば、その虫自体も医者に見せる必要があります。虫を持っていって判断してもらうことが非常に診断にも役に立ちます。

しかし、おそらく、どんなものがマダニなのかご存じないかもしれません。しばしば小さなイエダニなどと混同されて、しばしば余計な心配をかけたりしていますが、日本国内で見ることのできるマダニ種は肉眼で充分に見ることができる1ミリ以上の大きさのものです。しかもマダニは普通、藪などを好んで生息していて、家の中に自分
から上がりこんでくることはしません。体が乾いてしまうとたちまち死んでしまうことと、逆に水場などを極端に嫌うために、住居はマダニにとってあまり良い環境ではないのです。

マダニは特にわきの下や股間、頭などに張り付きます。一見するといぼのような風に見えることもありますが、よく見ると刺さっている口側に足が8本見えます。もしそんなマダニを見かけたらあわてずに、頭の刺さっている部分も皮膚から引き抜くように毛抜きなどでうまく抜いてください。マダニは刺すときに特に痛みを感じさせるこ
とがないので、噛まれたことに気がつかないことが多く、藪などを歩いて戻った夜などになって風呂に入ってから気がつくこともあります。しかし、多くのマダニは人の体に乗ってから、2,3時間歩き回り、その後刺しても更に5時間ほどは唾液をきちんと出し始めません。したがって、もし刺されている姿を見かけてもそれほど怖がる必
要はありません。

しかし、いずれにしても、放置しておくと重篤な感染症になってしまうこともありますので、季節のよくなるこの時期、行楽などに出かけて戻られました際には、帰宅後直ちに自分の体をシャワーで洗い流したり、服はすぐに着替えたりする習慣が必要です。また犬などと山道や藪を歩いた後は、犬の体にマダニが歩いていないかを確認することも忘れずに行ってください。

 
 
 
竹田@ロードアイランド
竹田 努(東京大学医科学研究所免疫調節分野 研究員)
平成7年 北海道大学大学院地球環境科学研究科生態環境学専攻博士課程(博士学位取得)
平成10年 Center for Vector-borne Disease,University of Rhode Island 博士研究員
平成12年 同 アルボウイルス研究主任
平成15年 東京大学医科学研究所免疫調節分野 研究員
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