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身近な危機管理
アメリカのロードアイランド大学でウイルスについて研究をされている竹田さんに日々の危機管理についてコラムを書いていただいています。

■2003.5.26 Vol.42
「七輪への想い」

アメリカのロードアイランド大学でウイルスについて研究をされている竹田さんに日々の危機管理についてコラムを書いていただいています。
 

七輪というのは珪藻土を素材にして作った家事や暖炉の役割を持つ炭火を起こす道具です。珪藻土はケイソウという植物プランクトンが堆積して化石としてできた土で、日本では能登半島などが産地になっています。

七輪との思い出はいくつもあります。初めて七輪を見たのは、スキー場で餅を焼いている様子でした。なんだ!この丸いのは?と思ってましたね。高校のころはジンギスカンを高校の庭でやったときに使っていました。4人の友人たちと一つの七輪の上に置かれたジンギスカンなべを囲んで、焼けたか焼けていないかわからないラム肉を競って食べた記憶があります。失恋で切ない思いをしていた大学生のころは、先輩が鰯(いわし)を大量に釣ってきて、七輪で焼きながら、僕のどうしようもない愚痴を聞いてもらったりしていました。七輪の炭火で焼いた鰯や秋刀魚(さんま)は特別に旨く、まるでそれが自分のおかげかのように自慢する先輩に日本酒を勧められながら、この先、まだまだあるよねと思ってました。

七輪の炭火のぬくもりは独特で、いわゆる「赤外線」が出るわけですから、中からホッコリするような温かさがあります。ただ炭は特に不完全燃焼を起こすと一酸化炭素を出してしまうので、絶対に屋内など締め切った場所で使ってはいけないのですが、野外の風のある場所では、この七輪ほど役立つものはありません。七輪の大きさはちょうど、人の顔が寄せ合えるほどの大きさしかないので、囲んで焼き魚をしたり、焼き鳥をすると、寄せ合う顔同士だけで、気持ちの中もほんのり温かくなります。

この七輪を使って、このごろ若い人たちが自殺しているようですが、それは本当に七輪の楽しみを充分に味わったことがある方々がやっているようには思えません。自殺なんかを行動しようとする前に、そこに集まったあなた方で、一度野外で秋刀魚を焼いてみたらどうでしょう。七輪を囲んでもう少し話をしてみましょうよ。

僕も若いころは何度も思いとどまってきました。こうやって貧乏でも心豊かに暮らせる今の状況を、もしあの当時の僕に伝えることができたら、もう少し楽だったかなと思います。でも、一人ぼっちだなと思ったときでも、なんだかおいしいものを食べたら、「ああ、もういいや」といつも思っていました。今だって決して、何もかも満足できる暮らしをしているわけではなく、人から無礼者扱いされるようなこともあります。それでも、旨い物を食べてると、「ああ、良いや。僕は僕だし彼は彼だし」と思えるようになりました。

まあ、食いしん坊な僕だから、あまり参考にはなりませんが。野外に出て、七輪でせめて、何か焼いて食べてみてください。

 
 
 
竹田@ロードアイランド
竹田 努(Rhode Island 媒介性疾病センター アルボウイルス研究主任)
平成7年 北海道大学大学院地球環境科学研究科生態環境学専攻博士課程(博士学位取得)
平成10年 Center for Vector-borne Disease,University of Rhode Island 博士研究員
平成12年 同 アルボウイルス研究主任
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