03/01/15 (水) 10:47 更新
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アメリカのロードアイランド大学でウイルスについて研究をされている竹田さんに日々の危機管理についてコラムを書いていただいています。
■2003.1.15 Vol.34
「西ナイル脳炎を水際で防ぐために」
アメリカのロードアイランド大学でウイルスについて研究をされている竹田さんに日々の危機管理についてコラムを書いていただいています。
1999年から米国内で猛威をふるっている西ナイル脳炎はおそらく今年はアメリカ西海岸で大流行が認められるでしょう。昨年の段階ですでに、マリナーズ、イチロウのいるワシントン州やカリフォルニア州でウイルス感染者や鳥類の感染が見られました。すでに日本の関係者も本格的な対策に乗り出しています。日本ですでに立ち上げられている計画は、蚊などのウイルス検査以外に、航空機などの殺虫、警察と共同で鳥類などの死亡確認調査、輸血の制限などです。いくつかの方法はこの西ナイル脳炎だけでなくマラリアやデング熱などほかの感染症にも有効なものになるでしょう。
アメリカでは殺虫剤の噴霧が行われましたが、これはクーラーや洗濯乾燥機の普及したアメリカならではのことです。夏の暑いさなかに、窓を閉め切れ、洗濯物は中に取り込んでおけというわけには行かないでしょう。確かに殺虫剤を噴霧する時間帯は夜中ですので、多くの家では干し物はすでに取り込んでいる時間帯でしょうけれども、一人暮らしをされている方々には少し酷な要望になると考えます。日本で噴霧が行われるのはおそらく、公共の場、例えば公園や河川敷などに限定されるのではないでしょうか。しかし、ここには大勢のホームレスが暮らしていますので、いざ噴霧をはじめると「嫌がらせではないか。」と非難されることも考えられます。したがって、日本で殺虫剤の噴霧はほとんど可能性が低い選択になるでしょう。
感染症が入り込んでしまうと、それはまるで重箱の隅々にへばりつく油のような感じで、取り除くことは難しくなります。しかも、年を経るごとに増殖を繰り返すので、一度入ってしまえば定着してしまうのは避けることはできないでしょう。
西ナイル脳炎を水際できっちり防ぎきるのは大変難しいことですが、拡散してしまったものを元に戻すほうが断然難しいことです。
今まで鳥類などのウイルス検査をロードアイランド州の動物園でやってきましたが、実際に鳥類を生かしたままで採血をする状況を目の前にすると、ウイルス感染検査を動物検疫で行うのはほとんど無理ではないかなと感じていました。しかし、ウイルス検査をしながら気がついたことは、ウイルス抗体陽性になりやすい鳥は、鶴や鷹のような大型の鳥に偏っており、ペンギンや鳩ほどの中型の鳥にも感染が認められましたが、商用でしばしば取引されるオウムやインコの類にはウイルス抗体陽性は認められませんでした。他の方が3年ほど前にやられた実験室内での感染実験で、「すずめがウイルスキャリアとして怪しい」という結果に疑問を感じさせられました。したがって、検疫担当者は、この点をあきらめずに中型までの鳥類に関して血液検査の検疫を展開してみることをお勧めします。哺乳類に偏重している日本の獣医師の方で鳥類を扱える方をさらに養成する必要性も並行してあると思います。
道端にからすが死んでいるのを見つけ始めた時点で、すでにウイルスは土着していると呼ぶことができるほど蔓延している状態だと考えます。からすなどは自治体によっては他のトラブルの元なのでいなくなったほうが良いと考える方もいるとは思いますが、カラスが激減したアメリカ東部ではドブネズミが走り回りました。ごみを清潔に出す方法を開発しない限り、このような衛生動物たちの餌食になりますので、単純に考えないほうが良いと思います。
アメリカ東部ではウイルスが完全に広がり、西ナイル脳炎ウイルスは夏の一場面のようになってしまいました。土着とともにこのウイルスは動物たちが持ち始めている抗体とせめぎ合わなくてはならなくなり、また医療関係者の経験も働き、いよいよ東部方面はウイルス被害者も減りつつあります。しかし、このウイルスは大海の一滴のように導入されたにも関わらず、その大海を飲み込んでしまったわけです。日本でも侵入確認する検査体制を強化すること、そして住民の皆さんも日ごろから蚊に刺されることに気を使うようにしていただくことが、このウイルスの侵入と土着を妨げる最大の手段です。
竹田@ロードアイランド
竹田 努(Rhode Island 媒介性疾病センター アルボウイルス研究主任)
平成7年
北海道大学大学院地球環境科学研究科生態環境学専攻博士課程(博士学位取得)
平成10年
Center for Vector-borne Disease,University of Rhode Island 博士研究員
平成12年
同 アルボウイルス研究主任
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