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身近な危機管理
アメリカのロードアイランド大学でウイルスについて研究をされている竹田さんに日々の危機管理についてコラムを書いていただいています。

■2002.9.17 Vol.33
「西ナイル脳炎はこれからどうなるのか?」

アメリカのロードアイランド大学でウイルスについて研究をされている竹田さんに日々の危機管理についてコラムを書いていただいています。
 
西ナイル脳炎は1937年にアフリカではじめて見つかった蚊媒介性ウイルスの一つです。症状は脳炎のほかに、筋力低下などが見られるようです。

1999年ごろからアメリカ大陸に入り込み、1999年には62名の患者を出し9名が亡くなりました。ウイルスの分布は最初見つかったニューヨーク市周辺から次第に西側に拡大しながら南下を続け、2001年にはフロリダ州にまで到達しました。フロリダはメキシコ湾に吹く熱風に暖められている地域で、蚊発生のピークは9月ごろに集中しますが、11月でも湿原には沢山の蚊が飛び回っているような場所を多く抱えています。歴史的にもフロリダ州は蚊媒介性疾病の公衆衛生上の問題は深刻で、州の公衆衛生関係機関は蚊のコントロールのスプレーを行うために、専用機を数機所有し、専用空港も存在します。

さて、フロリダ州に入り込んだことは、昨年のテロ事件でマスコミの関心がこのウイルスから離れた状況に反して、大変重大な問題を引き起こす可能性がありました。

一つとしては、蚊が越冬する時期を迎えることによって、ウイルス被害を季節性のあるものにしていた状況が他の州ではありました。しかし、フロリダの常春のような気象条件で越冬する必要のない蚊は、その地域のウイルス感染濃度を高める状況を生み出す恐れがあり、他の地域以上に危険性が高まる恐れがありました。

二つ目としては、フロリダは多くの渡り鳥が越冬するために飛来する沢山の湿原があります。この渡り鳥は夏場にはアメリカ全土に広がって戻る事から、翌年にウイルス陽性地域が拡散する恐れがありました。

三つ目は、フロリダは地理的に、キューバをはじめ中央アメリカに近く、充分な調査警戒活動ができない国々に拡散する恐れがありました。

まだいくつか問題がありましたが、2002年になって、西ナイル脳炎の患者数は1500人近くに膨れ上がり、死者も70名近くにまでなりました。感染地域も予想を上回り、ほぼアメリカ合衆国本土を覆うほどに拡散しています。さらに南方への移動は、充分な監視活動が行えていないために、死者の出没を待つしかないような状況になっています。

これから、このウイルスはどうなるのか。いくつか僕の予想を書いて見ます。少し予言のようになっていますが、これを警告と考えて、警戒する必要はあるということで書きます。

1.
ウイルスは2003年にはフロリダ地域を含め東海岸は患者発生に関してはより収束に向かいます。
2.
移植特に輸血などでの感染事故は今後倍以上増えるでしょう。
3.
2010年ごろには再び散発的な流行が起こるでしょう。
4.
2003年はメキシコ、ニューメキシコ、カリフォルニアでの流行が認められるでしょう。
5.
2004年ごろにはベネズエラなど南アメリカで患者の大発生が起こり、ウイルスの浸入を許した合衆国政府に賠償請求の話がいくつか出るでしょうが、すぐに立ち消えになると思います。
6.
フロリダ、ルイジアナは恒久的なウイルス感染地域になるでしょう。
7.
2003年をピークに患者発生数は減少するでしょう。
8.
ワクチンは2004年ごろようやく発売されますが、2007年ごろにはほとんど商用化できずに発売をやめてしまうでしょう。
9.
2003年はアメリカ国内に住む日本人のはじめての患者がでるかもしれません。その方はお年寄りか、北海道出身の可能性があります。
10.
日本人の症例が見つかることで、日本国内でもいくつかの大学で研究費をとって研究をはじめる人がでてくるかもしれません。
 
 
 
竹田@ロードアイランド
竹田 努(Rhode Island 媒介性疾病センター アルボウイルス研究主任)
平成7年 北海道大学大学院地球環境科学研究科生態環境学専攻博士課程(博士学位取得)
平成10年 Center for Vector-borne Disease,University of Rhode Island 博士研究員
平成12年 同 アルボウイルス研究主任
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