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身近な危機管理
アメリカのロードアイランド大学でウイルスについて研究をされている竹田さんに日々の危機管理についてコラムを書いていただいています。

■2002.4.22 Vol.29
「ワールドカップへの道のり」

アメリカのロードアイランド大学でウイルスについて研究をされている竹田さんに日々の危機管理についてコラムを書いていただいています。
 
建物の換気には気を使わなくてはならないわけですが、先月のテロ対策の講演会でも換気をどのように行うべきか質問がありました。たとえば札幌は今回ワールドカップのもっともエキサイティングなアルゼンチン対イングランドが行われますが、その札幌ではサッカーフィールドがドーム状態になっています。ドームはテロリストにとって最適な会場だと講演者も指摘していましたが、閉鎖系の会場は散布などが効果的で、さらにしばしば利用させる化学物質は分子的に大気よりも重いものを利用するので、換気した際に避難者とともに空気が移動することになり、出口付近に被害者が膨れ上がる可能性があります。

風船のような札幌ドームの場合は、換気口が会場の底面に存在するはずですから、換気の前に避難させるか、避難させてから換気するか、同時に換気しながら避難させるか、判断を誤ると、避難した外で被害にあう恐れもあります。以下の点に注意するべきです。

1.換気口の向き、排気口の向きを確認して、避難場所を決める必要があるでしょう。
2.当日の会場の風向きを充分に確認して、常に風上に避難させる必要があります。
3.会場周辺の住宅(札幌の場合はほとんどありませんが、大阪長居のサッカーグランドは注意が必要です)への即時的な連絡網が必要です。
4.会場に排気口が独自にあり、換気を作動したとき、出口に空気の揺れが会場内に向かって動くような場合は、トラブルが確認された瞬間に換気を始めることができます。また避難も直ちに行えます。
5.もし、排気口が会場の出口と併用したものである場合は、換気をはじめ、その後に避難を始めるという流れにするべきだと考えます。
6.イベントの中止判断には一名のみの主催者から独立した責任者を選出し、その人の判断が鈍らないように、関係機関とは独自の場所に待機させ、スポンサーや主催者の意向に振り回されないようにする必要があります。
7.中止に際する暴動に備えるために、常に集団行動をとらせないような対策が必要です。
8.被災者の避難を優先することよりも、一定人数の会場からのスムーズな移動を優先する必要があります。
9.被災者が子供などの場合は、保護者の希望に従い、付き添いを認め、子供の隔離を保護者を含めて隔離する方向に進めるべきです。
10.トラブルが生じた場合は、一定期間、学校などの公共機関は閉鎖し、学校内で二次被害が起こらないことを確認する必要があります。

ワールドカップの会場立地でセキュリティーの上で厄介なのは、このドームの札幌以外に、大阪長居のように僕は見ています。理由は、

1.こちらは住宅地が密集していること。
2.避難者が、公共交通機関である、地下鉄などに乗るまでに距離が無いことから、避難者の管理が難しい。
3.避難者は多く閉鎖系の地下鉄を利用することから、地下鉄構内で二次災害が起こる可能性が高い。

ただ、長居は大きなスタジアムで、サッカーグランド以外にもいくつか広場がありますので、そちらに待機させるように誘導することができるという上では、優れた場所ではあります。ただ、もしテロだとすると、加害者が被災者に紛れ込むので、二次攻撃を起こさせないように、しなくてはならないでしょう。

これからの日々が正念場になりそうですね。

 
 
 
竹田@ロードアイランド
竹田 努(Rhode Island 媒介性疾病センター アルボウイルス研究主任)
平成7年 北海道大学大学院地球環境科学研究科生態環境学専攻博士課程(博士学位取得)
平成10年 Center for Vector-borne Disease,University of Rhode Island 博士研究員
平成12年 同 アルボウイルス研究主任
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