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身近な危機管理
アメリカのロードアイランド大学でウイルスについて研究をされている竹田さんに日々の危機管理についてコラムを書いていただいています。

■2001.12.4 Vol.18
「セレウス菌」

アメリカのロードアイランド大学でウイルスについて研究をされている竹田さんに日々の危機管理についてコラムを書いていただいています。
先週末に熊本でもちから食中毒がありました。原因はセレウス菌らしいということです。

セレウス菌は、自然界に多く存在するバシルスの一つで、今問題になっている、炭ソ菌と生活環境的には似た場所に存在している好気性芽胞菌の一つです。
セレウス菌は毒素「Cereulide」を出す事によって嘔吐を引き起こします。
また、溶血作用のある物質もだし、菌体が体内で増えて深刻な状況になった場合は、この溶血反応が出ますが、主には上記の嘔吐毒素の働きがメインになります。
二番目に多い症状は下痢ですが、加熱食品などからの汚染では、この下痢の作用は高温(60度)などの条件下では不活化するタンパク質が関わっていることから、起こりにくいと思われます。

さて、今回は「もちつき」で症状が出たわけですが、餅つきの流れを説明します。

まず洗ったもち米を数時間、水にうるかします。その後蒸篭(せいろ)に入れて、ふかします。
蒸篭は高温スチームですから、もち米の下痢毒素は消えます。
残るとすれば嘔吐毒素Cereulideになります。

蒸篭の工程を終えた、もち米は臼(うす)に入れてもちつきが始まります。
この段階でリスクがいくつか出てきます。

・もちの温度が下がってくるために、臼、杵(きね)の消毒ができていない場合は、臼や杵から汚染が始まる。
・次にもちをひっくり返す役割の人がつける水や、本人の手から汚染が入り込む。
以上が考えられます。

臼、杵の事前の消毒は何がふさわしいかやや存知挙げませんが、ビールを造るときに発酵用タンクは「オスバン消毒」をして、その後充分に水洗いをします。
同様の工程でよいかどうかは「食品衛生法」などを参照する必要がありますが、検討されてください。

その後、もちを切り分けて、それぞれを丸く仕立てるわけですが、この時点では、大きな規模の食中毒になる可能性は低くなります。
切り分ける人の手が汚染されている、もしくは粉が汚染されていない限り、各人の手が汚れていても、数名の腹痛者を出すかも知れませんが、「食中毒」と確認できるほどにはならないでしょう。
したがって、餅つきでは、しばしば、参加者の手洗いを強調されますが、最も注意す るべき点は、

1.器具を充分に洗浄すること。
2.もち米などの材料はできるだけ新しいものを使う事
3.参加者は手を洗浄して参加すること。

もちろん、3は最低限するべきことです。

久しぶりに倉庫から出してくる臼や杵は、水洗いでは充分な洗浄ができているとは思えませんので、熱湯を使ったり、消毒薬を使うなどの方法を示して保健所などがご指導されたらいかがでしょうか。
 
【あんこについて】
 
「あんこ」から細菌が見つかったそうです。

<こしあんの作り方>

1 (洗浄、煮1)洗った小豆を鍋に入れ、水を入れて煮る。
2 (煮2)煮立ったら水を捨て、再度浸る程度に水を入れて煮る。
3 (煮込み3)煮立ったら差し水をして、水量を保ちながら2時間位弱火で煮込む。
4 (こす)豆が指先で潰れる位になったら、目の細かいざるにあけ、水を張ったボールの中で すりこぎで潰してこす。
5 布袋に入れて堅く絞る。
6 (練り)鍋に絞った餡と砂糖を入れ、弱火で焦がさないように練る。
※参考サイト:食の総合サイトFood's-Foo「柏餅特集」

ということで、もちに入れるので、こしあんではないとして、見ていきますと、おそらく4、5のステップはなしで、煮込んで水気を抜いた後、砂糖を入れたと思われます。
この工程で汚染が起こるとすれば、小豆自体が既に汚染され「毒素」を持っていたため、熱に強い嘔吐型になったと考えられます。
砂糖を入れて焦がさないように練るのは、結構大変な作業ですが、料理場では大体20分以上は練ります。
汗だくになります。

セレウス菌は穀物につきやすい細菌ですから、充分な洗浄をしても、穀物の内面に毒素が入り込んでしまうかも知れません。
ただ、「好気性菌」の性質から考えれば、小豆の表面に付着している程度ではないか?とも考えられます。手間ですが、2の工程をスキップしなければ、だいぶ安全性は保てると思われます。
手間をかければその分だけ食中毒は防げるという事なのでしょう。

料理長いわく「料理は愛」見えないお客さんの顔が見えなくても、楽しんで食べているお客さんの顔を心に思い浮かべながら作るべきだ。そうです。
そうすると、その分だけ手間をかけたくなる気持ちになるものだそうです。

これからクリスマス、正月シーズンで何かと、日ごろ作り慣れない料理を作る機会も増えます。また、クリスマスを迎える12月のケーキ屋さんは最盛期です。この時期に「調理工程の危険性」について吟味してみるのは良さそうですね。

竹田 努(Rhode Island 媒介性疾病センター アルボウイルス研究主任)
平成7年 北海道大学大学院地球環境科学研究科生態環境学専攻博士課程(博士学位取得)
平成10年 Center for Vector-borne Disease,University of Rhode Island 博士研究員
平成12年 同 アルボウイルス研究主任
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