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身近な危機管理
アメリカのロードアイランド大学でウイルスについて研究をされている竹田さんに日々の危機管理についてコラムを書いていただいています。
■2001.9.26 Vol.7
「町のにおい」
アメリカのロードアイランド大学でウイルスについて研究をされている竹田さんに日々の危機管理についてコラムを書いていただいています。
 

先日、ニューヨークのマンハッタンを早朝歩いて思ったのですが、くさいんですね。
日本でも、ここでも畑の広々としたような大学におりますので、この町のにおいは驚きます。
東京でも朝歩くと、くさいですよね。アンモニアのようなヤニのような独特のにおいがファーと広がっていて、「ああ、東京」って思うんですよ。
昼間は気が付かないし、夜もすっかり麻痺してるんですが、朝の涼しい風を浴びながら、「うっ」となります。

町のあのにおいはとても衛生的なにおいではないのですが、何処から噴出してきてるんでしょうか。夜の町の中で作り上げたにおいなんでしょうか。
やがて通勤時間になると各人の香料のにおいにかき消されるこのにおいの奥に、病原体が隠れているような気がしてなりません。

都市は人工的な場所のようですが、実は大変多くの野生動物が共生している独特な空間です。
人間生活というのは所詮は地球活動の一部に過ぎず、また人間も地球の一部と考えれば、人間の活動や都市もまた自然なのだという聞きなれない理屈になります。
しかし、それは真実です。
その大自然の中で野生動物、たとえばラット(どぶねずみ)やマウス(はつかねずみ)は逞しく駆け抜けています。
しかも、これら野ネズミは夜行性でして、夜の町を走ります。

ニューヨーク周辺ではこのマウスの中にハンタウイルスという怖いウイルスが入り込んでいると言われています。
特に、北米のハンタウイルスは人に感染すると致死率が高く、時々トラブルになっています。
ウイルスは尿中に含まれている事が多いので、余りにもネズミくさいところは要注意です。
感染すると腎臓などから出血し、また眼球も出血することで真っ赤になります。
放置すると死んでしまいます。
ネズミの中では感染は広がるのですが、致死させるようなことはないので、ネズミの密度の高いところでウイルスが入り込みますと非常に危険な状況になると思われます。

日本でも過去に大学の動物実験施設内で感染が認められ、大学職員が亡くなったケースがあります。
日本のハンタウイルスの場合は、ラットから人への感染が知られています。
ラットは何処でもおります。夜のマンホールなんかに入って、ライトを照らすとあちこちに光が見えるそうです。
ラットの目が光っているんですね。

野ネズミは多くの感染症を運び込みます。
森の中で生きるネズミと、都市のネズミは種類が違いますが、似たような感染症をお互いに持っておりますので、何らかの接点がお互いにあるのだと思います。
感染症が運び込まれているのか、あるいは運び出しているのかは分かりませんが、彼らなりの流通経路があると思いますので、都市の環境を整備しなければ突然大きな感染症被害に巻き込まれてしまうかもしれません。

「ああ、東京」というにおいはなんとも懐かしい故郷の匂いなんですが、改善していかなくてはいけないものなのかも知れません。


竹田 努(Rhode Island 媒介性疾病センター アルボウイルス研究主任)
平成7年 北海道大学大学院地球環境科学研究科生態環境学専攻博士課程(博士学位取得)
平成10年 Center for Vector-borne Disease,University of Rhode Island 博士研究員
平成12年 同 アルボウイルス研究主任
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