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身近な危機管理
アメリカのロードアイランド大学でウイルスについて研究をされている竹田さんに日々の危機管理についてコラムを書いていただいています。
■2001.9.11 Vol.4
「狂牛病疑い(これを機に縦割り行政を見直せ)」
アメリカのロードアイランド大学でウイルスについて研究をされている竹田さんに日々の危機管理についてコラムを書いていただいています。
 
「疑い」が出るまで

厄介なものが入り込んできました。

家畜に対する厚生労働省の対応というのは以前から指摘されてきた問題だと思うんですが、なぜ検疫体制を、農水省、厚生労働省の2省で2重に行う方針を取れないのか、疑問に思います。

農水省のテリトリーには厚生労働省は入れないといような、縄張りで仕事をしているから人畜共通伝染病の防疫が不完全になります。
8月6日に処分した牛の検査結果が一ヶ月もたってから出るという遅さはどこに原因があるのでしょうか。

しかし、今回の問題で評価したいのは「疑い」の時点で問題をリリースした事です。
感染が過去なかったものに関してはできるだけ早く「疑い」の形で速報を出し、周囲への注意を呼びかけるのが得策です。ただし、すでに侵攻が知られている感染症に関しては「疑い」レベルでリリースすると、パニックを引き起こします。
したがって以降の狂牛病に関する情報リリースはすべて、はっきりとした陽性についてリリースするべきです。そうしなければ各地で混乱が起きます。

でも、「疑い」の結果が出るまでに時間がかかりすぎてますね。
診断方法は常に並行して最低2種の複数の手法で行い、それらの結果がすべて陽性の場合は「陽性」。一部が陰性の場合は「疑い」、すべて陰性の場合は「陰性」と呼ぶべきで、今回、欧米の方法を信じて診断方法を絞っていたのは問題でしょう。
結果的に顕微鏡で確認しているのですから、最初から鏡検を進め、免疫を用いた方法も行うべきでした。そうすれば8月20日ぐらいにはすべての結果とマスコミ対策までいけたのではないでしょうか?

 
狂牛病の検査

狂牛病の検査について、気になることがあります。
『動物衛生研究所は検査後、狂牛病の権威のイギリスの研究所にサンプルをおくったそうで、検査には数日、または数ヶ月かかる』というような記事を見ました。何か怒りに震えております。


第一の疑問です。
狂牛病の問題は以前から騒がれていて、日本の大学では狂牛病の診断方法と称した研究テーマに取り組んでいるところが複数あるはずです。
日本でも充分に検査はできるはずです。
それを何ヶ月もかかるかもしれない、でも今まで見つかった事のない国の検査は優先でやってくれるかもしれない、イギリスに送ったのはなぜでしょう。
そんな「やってくれるかもしれない」というような研究機関に送らなければならないほど、何千万円も研究費を使っている日本の大学等の研究機関ではおぼつかないのでしょうか?

第二の疑問です。
このサンプルを送ることに関して、どのような手続きで送ることが許されるのでしょう。
狂牛病のサンプルを輸出できるような手続きがあるのでしょうか?誰がカーゴ内の汚染がおこらないことを保証しているのでしょうか。

第三の疑問です。
現在周辺地域の検査結果が始まっていない段階で、「感染の広がる可能性は低い」といった説明をする根拠は何処から来るんでしょう。

第四の疑問です。
乳製品から感染が広がならないと説明するうえで、具体的に「なぜ起こらないのか」という仕組みを、人に牛から感染が広がる仕組みが分かっていない段階でいえるのはなぜでしょう。

役人は誤解してると思うのです。
いくら牛乳は安全だからといっても結局は食品なのです。
誰も狂牛病に疑われる牛の乳など飲みたくはないのです。

たとえば、AとBのジュースがあって、そのどちらかを選ぶか?と聞かれたときに、「Aのジュースのリサイクル瓶は水でよく洗っています。万が一汚れていても、酸が強いので大丈夫。」
と説明があった場合、Aのコーラを選ぶか?という事なのです。

千葉の牛乳に風評被害を恐れる前に、まずは千葉だけでなく、家畜全体の健康状態をチェックして、問題は広がっていないかを確認するほうが先です。
千葉の牛乳だって、牛の肉だって、どんなに安全と説明を受けたって、ほかを選ぶ事ができるならほかを選びます。それが消費者です。だから日ごろから注意が必要なわけです。

大丈夫大丈夫といくら専門家が説明したって、今まで専門家以外誰も聞いた事がない、国際獣医なんたら協会が言っている、と説明しても、「ああ、そんな組織があるんだね」としか聞けないのです。
治療方法のないような病気になるかもしれないと考えるなら、オーバーリアクションだって、しばらく牛肉は食べないでおこうと思うわけです。
牛乳も辞めとくかなと思うわけです。

だからそれを風評被害と思い込むのは大違いで、そのおかげでひょっとすると患者を出さずに済むのかもしれないわけですから、逆にそれを利用して、きっちり調べなおして、安全宣言をするべきです。一時的に起こるパニックを恐れては駄目です。

独立法人であっても農水省は、動物衛生研究所、家畜保健所という独自に調査組織を持ってきたはずですから、それらに大学の獣医関係を集めて緊急事態に対処するべきでしょう。いまこそ機動力を見せずして、日ごろ評論家のように「人畜共通伝染病は...」と説明してきているのですから、権威は名折れになります。
まずは黙って調査をし、その調査結果を元に安全宣言をするべきです。

調査なしに、うだうだ想像したり、他国の事情を思い浮かべている時間ではないと思います。
調査はまず、疑わしきはすべてあたることです。
水から糞便まで全部調べて、白をだせるなら出す事です。
そうすれば間違いなくすべての人が納得するはずです。
調査に時間を費やすべきではありません。
まずは今の状況を把握する調査で、短期集中で進め、後に大学などに移管して、長期的観測を行うという方法にするのが効率いいでしょう。
ここ、一番です。
外国に調査検体を送り飛ばした関係者をサンプルと一緒に外国に送り、外国のやり方をきちんと学ばせるべきです。

そして、第五の疑問です。
農林水産省は汚染が起こったかを解明する事も大切ですが、現在汚染が広がっていないかを検査するほうがまず先決ではないのかと思うのですが、その対処はされているのでしょうか。

日本は研究費をたくさん使っているのに、他国に検査を依頼しなければならないほど危機管理が甘い国なんですね。
本当にやらなくてはならない課題はたくさんありますね。

 
関連リンク
狂牛病(yahoo)
狂牛病等に関する厚生労働省の対応状況について(厚生労働省)
動物衛生研究所
牛海綿状脳症-Bovine Spongiform Encephalopathy ( BSE )
農林水産省
 
竹田 努(Rhode Island 媒介性疾病センター アルボウイルス研究主任)
平成7年 北海道大学大学院地球環境科学研究科生態環境学専攻博士課程(博士学位取得)
平成10年 Center for Vector-borne Disease,University of Rhode Island 博士研究員
平成12年 同 アルボウイルス研究主任
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