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私たちの身の回りには無数の危機があります。危機に直面した時、被害を回避したり最小限にくい止めるためには、日頃の適切な備えが必要です。このコーナーでは、そんなひとりひとりの危機管理を考えていきます。

■防災研究者の与太噺 2002.1.29 Vol.2
「神戸の地」「神戸の血」そして「神戸の知」

富士常葉大学環境防災学部で防災について研究をされている小村さんに防災学についてコラムを書いていただいています。

災害救援に携わる多くの仲間と同様に、私にとっても「神戸の地」は特別な場所であり、ここに来る度に何とも言えない力を感じます。例えるならば、「駄法螺は許さないぞ」「背筋を『ピッと』伸ばせ」と言うような。三ノ宮に来ると、時間が許す限り「にしむらコーヒー」に入ります。宮水で入れたコーヒーを飲むのは神戸に入る楽しみの一つですが、「にしむらコーヒー」ならではの丸く甘いコーヒーを飲むたびに、「今、お前は何をしているのか?」と、問われているような気がしています。
被災を受けて7年目の神戸が、これから先、日本と世界の防災のために何を発信していくのか?それは神戸の課題であり、私自身の課題でもあると思っていますが、このコラムを書いている今日(1月28日)、「神戸の地」から「神戸の知」を発信しようとする、とある組織の立ち上げに同席することが出来ました

震災の後、「神戸の地」には災害救援を考える多くの組織が出来ました。国内での災害救援のみならず、海外での災害救援や難民・国内被災民救援のために、国連人道問題調整事務所(OCHA)アジアユニット、アジア防災センター、国際協力事業団兵庫国際センター、国連地域開発センター兵庫事務所等々、いくつもの国際機関が軒を並べるようになりました。その中で今日発足式を迎えたのは、「海外災害救援市民センター(通称CODE)」という、復旧・復興・減災に立ち向かう市民・学者・ジャーナリスト・企業・行政・国際機関・NGOなどの幅広い「市民」が集まる場たらんとする組織でした。これから先、海外での災害救援活動や人道援助に、市民の力は欠くことが出来ない。しかし、市民の力だけでは出来ないことも当然多い。それゆえ、行政も学者もジャーナリストも共に集い、神戸の教訓を伝えていくために助け合おうではないか、そんな気迫が伝わってきます。発足式にはわざわざ兵庫県知事もかけつけ、知事なりの言葉で、CODEへの期待を語ってくれました。

言うまでもなく、この組織を支えようとしている人は、この活動でお金をもうけようとは思っていません。その意味ではボランティアなのですが、災害救援系ボランティアの否定し難い実態である「土地勘のない膨大な数の無組織単純労働者」(京都大学防災研究所の林先生による)とは、二味も三味も違います。彼らは神戸を代表とする学者・研究者や企業人であり、何かを伝えなくてはという思いのみで、忙しい時間をやりくりして集まっていました。そしてその情熱の相互作用が、アルコールの力も借りて、懇親会は大変な盛り上がりを見せました。まさに「神戸の知」の底力を見た思いでした。

直接的な死者だけで5504名、いわゆる震災関連死を含めると6500余名。これらの「神戸の血」が、神戸からメッセージを発しようとしている「神戸の血」を生んだのだと思っています。なるほど、震災体験の風化は進んでいるかもしれません。それでも「神戸の地」には、あの震災を体験し、そして単なる経験談ではなく「知恵」のレベルにまで経験値を高め、「仕掛け」のレベルにまで思いを具体化した人々がいます。被災体験者の個人的な思いを聞くことも大切にしたいと思っていますが、私のような者にとっては、「神戸の知」は何よりも得がたいものです。願わくば、より多くの人が「神戸の知」と接してほしいし、彼らの「知恵」と「仕掛け」にどういう形で応えるか、そこを共に考えていきたいと思っています。

そんなことを頭のどこかで思いつつ、明日は「にしむらコーヒー」に行けるかな、そのことばかりが気になる神戸の夜でした。

 

ご意見、ご要望、ご質問などは、komura-column@rescuenow.netまでお願いします。


富士常葉大学環境防災学部講師 小村隆史
 
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