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02/03/19 (火) 20:50 更新
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アウトドアからボランティア、純文学まで、ジャンルを越えたおすすめ本やビデオの紹介します。意外なところに、防災やレスキューのヒントが潜んでいるかも!?  
Vol.2「クックブックに見るアメリカ食の謎」
著者:東理夫
出版社:東京創元社 (2000年5月30日出版)
ISBN:4488023630 『先住民がタンポポの塩(極上品!)を発見し、移民がフライドチキンを生みだす、食のるつぼアメリカ。 その地でいまや、薄味コーヒーはエスプレッソへと変わりゆく!アメリカ=ジャンク・フード王国と早合点するなかれ。 個性派クックブックをひもときながら、おいしいアメリカ食をさぐるまったく新しい試み。』

アメリカを旅していると、不思議に思うことがあります。味の均一ぶりについてです。東西南北、春夏秋冬をとわず、アメリカでは食材がほとんど同じ値段で出回っています。日本のスーパーマーケットが、梅雨入りだの虫歯予防デーだのといった行事にいやに熱心なのに比べ、アメリカのスーパーマーケットは、拍子抜けするくらい、季節感がありません。ありとあらゆる果 物、魚、野菜が、これでもか、というほど山積みにされています。どうしてなのでしょう? 本書は、このような疑問から始まります。
時代は遡って、開拓時代。人々は自由と農耕地を求めて、西部を目指します。サスペンションの悪い幌馬車は荷物用だったらしく、大人も子どもも連れだって馬車の脇を歩きます。砂糖はインドゴムの袋に入れ、肉は燻して携帯する。この時代、移動する人々にとって問題だったのは、野菜不足の解消法です。当時、ポパイが握りつぶすほうれん草の缶 詰も、すでに開発されていました。ところが、缶詰の野菜はかさばるわりには量 が少なく、携帯には適していなかったということです。そこで、人々はトウモロコシの粉を持ち歩き、少量 の砂糖とシナモンを混ぜて水に溶かして、壊血病予防の薬にしたそうです。
このとき開拓された西部は農場になりました。家畜や作物を運搬するために、カウボーイが登場し、鉄道が走ります。ハイウェイが整備されます。アメリカ全土に輸送網が整備され、人々は作物を一年中、自由に取り引きできるようになります。これが、アメリカにとっての豊かさでした。  そして現代。ファストフードはもちろんのこと、スーパーマーケットでもホテルのレストランでも、アメリカ食は一年中、どこにいってもほぼ同じ味、同じ値段です。 この均一ぶりの謎ときに迫る著者は、次の三つを挙げています。あくまでも仮説なのですが、なかなか言い当てているように思えます。 第一に、開拓時代に培われた、自由と平等を尊ぶ建国の精神。 第二に、放っておくとばらばらになるいっぽうの移民の国が、かろうじてまとまりを保とうとする意識。 そして第三に、人々の「感覚」です。
ここにチキン・ヌードル・スープはある。それが、レストランのコックのアントーニオにより、あるいは家庭料理がうたい文句の店のアウント・ベティにより、また町の人の胃袋を満たすために独身を通 してきたローサイド・ダイナーの調理係スーザンによって味が異なるのには耐えられない人が多かったということなのだ。彼らは、どんな時でもけして味の変わることのない、缶 詰のチキン・ヌードル・スープの方を選んだのだった。」(177頁)
開拓時代、かさばるから携帯には不向きとされた缶詰が、廃れずに現在も重宝がられている理由が、この「感覚」にあるのです。有珠山や三宅島からのテレビ中継で、乾パンが3カ月分確保されている、という旨の報道を聞くと、日本人である私は、なんともがっかりした気分になってしまいます。でも、アメリカの場合は違うようです。乾パンにチキン・ヌードル・スープの缶 詰3カ月分。それは、通常の生活と変わらない生活が保証されているという、何よりの吉報になるのではないでしょうか。


(Text by 坂口緑 国際ボランティア学会会員・大学講師)
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