安全・防災コラム

生死を分ける5分間 02.11.19 16:05


「寸秒を争う応急処置。応急処置の重要性について」

 そこに倒れている人がいたら、あなたはどうしますか。もし、出血していたら? もし、呼吸が止まっていたら?

●寸秒を争う応急処置
 誰かが119番に通報してから救急車が現場に到着するまでの平均時間は、東京都内で5分少々。全国では約6分(平成11年版『消防白書』による)。ところが、実はこの 5分間という時間が、傷病者の生命を大きく左右することになります。呼吸停止2分後 に人工呼吸を始めれば90%の確率で救命できますが、3分後では75%、4分後は50%、5分後は25%と急激に下がり、10分後にはほとんどゼロ%になってしまいます(ドリンカーの救命曲線による)。
 そこで、その場に居合わせた人による「応急手当」が非常に重要な役割を果たすことになります。応急手当は、生命に関わる症状を優先し、次のような順で行われます 。    

    1.大出血していたら → 止血の手当    
    2.意識がなければ  → 気道確保    
    3.呼吸がなければ  → 人工呼吸    
    4.脈拍がなければ  → 人工呼吸+心臓マッサージ(心肺蘇生)

救急蘇生法(日本医師会)

●その5分間に何が起きる?
 応急手当の方法については上記のサイト等をご参照いただくとして、ここでは「もし手当をしなかったら人体に何が起きるか」という角度で見てみることにします。

1.出血
 そもそも血液とは、酸素と二酸化炭素、養分、老廃物、ホルモンを運搬するのが主な働き。体内の水分、塩分、PH、体温の調節も行っています。 人間の全血量は、体重の1/12~1/13ほど。体重1kgあたり約80ml、50kgの体重の人 で約4リットルとなります。この内の1/3を一時に失うと、体内を循環する血量が減り、生命に危険があるとされています。体重60kgの人が1升ビン1本分の血を失うとと危ないという計算です。徐々に出血している場合でも、あまり貧血が進むと種々の臓 器の機能低下を引き起こし、生命は危険に晒されるのです。また、出血による「ショック」を起こす場合もあります。体重の10~15%の出血では頻脈となる程度ですが、20%以上だと「出血性ショック」となり、脈拍頻数、血圧低下、皮膚の蒼白、チアノ ーゼなどが起こります。
 一説によると、脳への血流が10秒間ストップしただけで大抵は意識を失い、脳全体の酸素欠乏状態が2~3分続くと死に至るか、命を取り留めても健常な暮らしはできなくなるといいます。  

2.呼吸停止
 事故などで突然呼吸の止まるよう な状態になると、肺に空気が届かなくなるために血中ヘモグロビンへの酸素供給が止まります。そして、組織中の酸素欠乏をきたし中枢神経の麻痺を起こして、死に至るのです。
気道が塞がれて呼吸ができない場合は、5~10分で心停止に至るといいます。2分経過の時点で、すでに酸素飽和度は50%以下、血圧(収縮期)も30mmHgを割り、意識喪 失、瞳孔が開き、脳波も平坦となります。
 一方、心臓血管障害や薬物、感電などによる心停止の場合は、急激に循環が途絶し、15秒以内に意識喪失、15~30秒で脳波は平坦になり、30~60秒で無呼吸、瞳孔が開くそうです。心臓が停止してしまえば、血液も体内を循環しなくなり、数分以内に細胞や組織が死滅しはじめます。

●あなたにもできる応急処置
 このように、傷病者の体内では、わずか2、3分の間に生命を維持する働きが危機に陥ります。放置しておくことがどれほど危険か、なぜ手当が寸秒を争うのか、実感としてとらえられるのではないでしょうか。ところが、いざ倒れている人を目の前にすると、呆然と立ちすくしてしまう人が多いのも事実のようです。震災や風水害等により、同時に多数の傷病者が出た場合は、救急車が来てくれることを期待するのは困難です。住民同士がお互いに手当てし合い、自主救護を実行しなければなりません。他人を救うことが自分を救うことにもなるのですから。  
 応急処置の具体的な方法については、関連Webサイトやマニュアル本でも学ぶことができますが、「救命講習」などで体験を通して習得する方が、より実践的に身に着くようです。
 

応急手当(東京救急協会)】 

  いざという時、大切な人や隣人を救えるように。応急処置を身につけるのは、今からでも遅くはありません。

 
<参考書籍>
・『上級救命講習 身につけよう応急手当』 財団法人東京救急協会    
・『救急医学』 看護のための臨床医学大系20 情報開発研究所   
・『NHK驚異の小宇宙・人体 しなやかなポンプ心臓・血管』 日本放送出版協会

※この記事は、2000~2004年頃の「rescuenow.net」に掲載されたものを再掲載したものであり、筆者の所属や登場する団体名等は、このコラムの執筆当時のものです。

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