[こだわり商品レポート] 缶入りソフトパン「Q急ベーカリー」 02.02.26 16:03
いつか、おいしくて保存性のあるパンをつくりたい。 そんな思いから生まれた世界ではじめての缶詰めパン。
きっかけは阪神大震災の被災者に届けたパンから。
缶詰パンの、そもそものきっかけは平成七年の阪神淡路大震災でした。パン屋として何かできることはないだろうかとの思いから、約二〇〇〇個のパンを被災地に送り、被災者にはとても喜ばれました。しかし、賞味期限を過ぎると簡単に捨てられてしまう。その時、乾パンのように長期保存ができ、しかもふっくらとやわらかいパンを作ることはできないだろうかと考えたのです。また、以前、知人の宣教師とインドやネパールを旅行した際、食べ物に困っている路上生活者を目にして、自分に何か少しでも手伝えることはないかと思ったことがありました。
「いつかおいしくて保存性のあるパンを作りたい」。 そうすれば、世界中の食べ物に困っている人々にパンを送り届けることができるからです。こうした思いが、阪神大震災を機にはっきりと形となったわけです。そこで、震災直後、すぐに缶詰パンの開発に取り組みました。しかしそれは、簡単ではなかったですね。
焼きたてのふっくら感を追求すると、どうしても長期保存を無視しなければなりません。なぜなら、ふっくら感を保つためにはある程度の水分が必要であり、そのためにカビが生えやすくなるのです。逆に長期保存を求めると、乾燥させなければならないので、ふっくら感がなくなり味が劣化してしまいます。この"おいしさ"と"保存力"という相反する要素をどう克服するか、まさに試行錯誤の連続でした。
評判は口コミで広がり、都内の百貨店からも注文が来るように。こうした試行錯誤の繰り返しの末、ようやくたどり着いたのがパンの生地をスチール缶に詰め、そのままオーブンで缶ごと焼き上げ、すぐに脱酸素剤を入れて密封する方法でした。缶を熱殺菌すると同時に、脱酸素剤で缶の中の空気を抜くことによって、菌の繁殖と酸化による品質の劣化を防ぐわけです。この結果、一年から種類によっては三年間の長期保存が可能となりました。
さらに、パン生地を熱に強い特殊な紙で包んで焼き上げるので、適度なしっとり感を出すことも可能になりました。完成したときは武者震いがしましたね。日本か世界かはわからないが、とにかく通用する商品になるだろうという手ごたえは感じました。
いろいろな方法を試して、ステップを踏んで、理論を練り直して開発に成功した缶詰パン。四年前に発売してからは口コミで評判がひろがり、都内の百貨店やコンビニなどからも注文が増えました。緊急災害時の非常食として地方自治体からも受注しています。台湾大地震のときは、私の友人が台湾に持って行って好評でした。また、老人ホームなどの非常食としても使われています。「缶詰パンがあったおかげで命が救われた」と言ってきた独居老人の方もいます。 今後は、社会福祉の一環として、独居老人の手元に常に置いてある「配置食」、つまり「配置薬」のような存在に缶詰パンがなればいいとも考えています。そのほか、世界初の缶詰パンとしての珍しさからお土産やイベントの記念品などにも使われています。最近では、ある県の巨大なレジャー施設が景品として使うことにしています。アウトドアブームも追い風となりました。開発が成功したときの「これでいける」という予想通りの形となっています。
株式会社パン・アキモト 代表取締役 秋元義彦
(ABC会員に聞く 私の経営歳時記:EXECTIVEINTERVIEW No.24 より抜粋)
※この記事は、2000~2004年頃の「SHOPRESCUE」に掲載されたものを再掲載したものであり、筆者の所属や登場する団体名等は、このコラムの執筆当時のものです。












