安全・防災コラム

テロ攻撃に対する防御保護具のレベル別種類 02.02.08 13:42


テロ攻撃に対する防御保護具のレベル別種類

「災害に有効なマスクを用意」

 以下、防御保護具について教えてくださったのは、(株)レスキュープラスの熊谷仁さんです。

 現在、一般にも販売されている軍事用防毒・防塵マスクはイスラエル製、米国製、ドイツ製などがあり、ほとんどが軍の払い下げ品とみられます。そのため、除毒用の薬剤(活性炭)が湿気ていて、実際に役に立つかどうか疑わしいものが多いと指摘する専門家の意見があります。また、薬剤缶のキャップを締めたまま装着したため、窒息死した老人や子どもの例も報告されています。

 化学兵器テロが発生した場合、実際にマスクがどのように運用されたかが検証できる事例が「地下鉄サリン事件」です。
 この事件では、異臭がして逃げようとした一般人、それを助けようとした地下鉄職員が次々に倒れるという事態が起こりました。その状況から、消防・警察は化学兵器によるテロの可能性を疑い、化学防護服と空気呼吸器を完全装備した部隊が地下鉄構内に入って、主に以下の項目について現場の調査を行ないました。

1. 何が発生したのか、発生しているのか。化学物質か細菌か。
2. どの程度の濃度か。
3. 濃度は上昇しているのか、変化がないのか、下降しているのか。
4. どの範囲まで汚染されているのか。

 そうして、現場での化学物質の種類がサリンであること、その濃度から防毒マスクで対応可能であるとの判断が出たところで、除染部隊が作業に入りました。

 この事例から、化学物質や細菌の種類、濃度などが判ってはじめて、防毒マスクで対応できるかどうかが判断できることがわかります。そうすると、一般の市民が、テロ対策として軍事用の防毒マスクを購入したところで、それが有効かどうかをどうやって判断するのか、という疑問が湧いてきます。
 また、このような防毒マスクは、火災時に発生する一酸化炭素ガスなどを除去する機能がないと考えられるので、一般の方が常備するマスクとしては、より使う可能性が高い火災時の防煙マスクとしては役に立たないことが指摘されています。

 これらを総括すると、火災時の死亡事故のほとんどは、煙に含まれる有毒ガスによる窒息死であることを認識した上で、より発生頻度が高い火災時に使用できるもの、そして有毒ガスを含む煙を除去できる防毒・防煙マスク、できれば頭部を守る『フルフードタイプマスク』を装備されることをお勧めします。
 
【マスクの種類】
 最も最高レベルの防御は、外気(汚染された環境)から完全に隔離遮断された状態で行動できる「化学防護服+ボンベ式空気呼吸器」の装備です。
 
◎軍事用防毒・防塵マスク
 フィルター及び専用の活性炭から構成される「除毒缶」により、汚染された空気をろ過します。このマスクは、放射性粉塵や粉末にまぶした炭そ菌などの細菌等はフィルターで捕そく除去できます。
 また、毒ガス兵器である「サリン」「タブン」「VX」などは、溶剤中に溶かしてミスト(霧)状にして散布されるので、それを活性炭が吸着することで吸入を防ぐことができます。
 ただし、完全にガス化したものは、専用の徐毒缶を使用しないと除去できないので、有毒性のガスや火災時等で発生する一酸化炭素ガス(CO)などは除去できないと考えられます。
 
◎防毒・防煙マスク
gardmask_main.jpg火災時の避難用マスクに対しては、消防庁の通達基準にもとづく(財)日本消防設備安全センターの認定制度がありますが、その基準は有毒ガスである一酸化炭素ガスの除去のみとなっています。火災時には複数の有毒ガス(青酸ガスや塩化水素ガスなど)が発生することから、それらに対して有効なマスクであることが重要になります。
煙の中の粒子物質(ハイドロカーボン)であるスス等を除去する防塵機能を持ち、熱風や炎から頭部を守るためのフルフードタイプであれば、同時に目や耳などを含む露出部分が有毒性化学物質に触れることも防げます。
ショップレスキュー:緊急用防煙マスク ガーディ・マスク

◎防塵マスク
filtermask_main.jpg粉塵を防止するためのフィルターマスク。
安価な使い捨てタイプ、フィルター交換タイプ、放射性粉塵等を除去するための高性能フィルター付きのものなど、フィルターの捕集性能によってランクがあり、種類も多様です。ただし、有毒性ガス等の除去はできません。
ショップレスキュー: 高性能フィルターマスク

kumagai.jpg(株)レスキュープラス 熊谷 仁(くまがいひとし)
消防設備士 
(社)日本火災学会会員
東京消防庁 本田消防団員

※この記事は、2000~2004年頃の「rescuenow.net」に掲載されたものを再掲載したものであり、筆者の所属や登場する団体名等は、このコラムの執筆当時のものです。

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