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災害に強いコミュニティーづくり

02.02.05  この記事をGoogle Bookmarksに登録する この記事をYahoo!ブックマークに登録する この記事を含むlivedoorクリップ この記事をイザ!ブックマークに登録する この記事をニフティクリップに登録する この記事をdel.icio.usに登録する この記事を含むはてなブックマーク


 2月1日、千葉市幕張にある「市町村アカデミー」(市町村職員中央研修所)で、全国の市町村職員約80名を対象に、「災害に強いコミュニティーづくり」というテーマで話をする機会をいただきました。他の講師陣は、神戸大学都市安全研究センターの室崎先生、東京大学社会情報研究所の廣井先生、京都大学防災研究所の河田先生といった、日本の防災をリードする諸先輩ばかり。与太噺しかできない我が身を恥ずかしく思うとともに、自学自習で防災を学ばざるを得なかった者としては、このような機会がある研修生をうらやましくも思いました。それはさおてき、今回は、この「災害に強いコミュニティーづくり」の話を。

 いろいろな場所でこの言葉(課題と言うべきでしょうか)を聞きます。しかし、現実社会の中で、このようなコミュニティーを作り出していくことは、決して容易なことではありません。必要性は誰もが認めているところですが、「べき論」を声高に語っても何も起こりません。普段から学生に対して「問われるべきは方法論である」と言っている我が身ではありますが、とはいえ、特効薬がある訳でもなく、各地で試行錯誤が繰り返されているのが実態ではないかと思います。

 私は、この種の話があるたびに、ワンパターンではありますが、三重県における実例を紹介しながら、「あなたのコミュニティーでもうまくいくという保証は出来ないけれど、今のところそこそこうまくいっている例として、こういう方法があります」と言って、2つのものの活用をお勧めしています。

 1つは「地図」です。防災訓練や防災講演会など、「災害に強いコミュニティーづくり」のために様々な試みがなされていますが、私であれば訓練や講演会は次の機会に譲り、まずは缶ビールとおつまみ、そして参加する皆さんが住んでいる地域のなるべく縮尺の大きな地図を用意します。例えば小学校区が畳2枚大ほどにおさまるようなものがあればOKです。その上からテーブルクロス用や農作業用の透明シートをかぶせます。小道具としては油性ペンと色のついた丸いシール、ベンジンとティッシュペーパーもあれば嬉しいですね。これで準備は完了です。
 カンパイをし、乾き物をつまみつつ「幹線道路や鉄道を黒でなぞる」「河川は青でなぞる」「消防車が入れないような細い路地は赤くなぞる」「援助がなければ避難できないような人が住んでいる家に赤のシールを貼る」「小学生の高学年から高校生、自宅住まいの大学生・専門学校生が住んでいる家に白のシールを貼る」「公園などの広い空き地は緑の線で囲む」「昭和50年代の前半までに建てられた木造家屋には茶色で印をつける」といったことをします。そうすると、地図が自ずと語りかけてきます。このコミュニティーではここが災害に弱い、ここに助けを求めている人がいる、と。そして書き込みの過程で、参加者がひとりに話し合いを始めているはずです。自分の住む街の災害に対する強さ弱さを知ると共に、災害救援について語り合った経験を持つ仲間を持てること、これが地図の持つ効用です。

 2つ目は「祭り・イベント」です。祭りやイベントは、団結の場、団結を確認する場、そして新しい出会いの場です。「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃソンソン」という言葉があるように、祭りやイベントは参加してこそ楽しめるもの。遊びに来る人を、どれだけ多く関係者として巻き込むことが出来るか、ここが勝負の分かれ目です。なるべく多くの人に「この指とーまれ」と声をかけ、仕掛けに巻き込み、何らかの役割を担ってもらいたいものです。
 この過程で、顔見知りも増えるでしょうし、指示を出すこと出されることにもなれていくでしょう。この種の活動には仕切り屋がいてナンボ、ということも皮膚感覚でわかってもらえるでしょうし、きちんと活動してもらうための段取りの重要性や、飲ませ食わせてこそ人が動くということも、自然に理解してもらえると思います。そして、この種の経験を積んだ者がどれだけいるか。それがコミュニティーの底力となるでしょう。

 現実社会の中ではこんなにきれいにはいくとは限りません。それでも、地図と祭り・イベントの活用は、「災害に強いコミュニティーづくり」を図る上で欠くことのできない方法だと私は考えていますし、事実、三重県ではこの2つが相まって、全国に誇れる幾つかのノウハウが生まれました。それらの実例については、いずれ近いうちに。

2002.2.5

※この記事は、2000~2004年頃の「rescuenow.net」に掲載されたものを再掲載したものであり、筆者の所属や登場する団体名等は、このコラムの執筆当時のものです。

小村 隆史(こむらたかし) 富士常葉大学環境防災学部防災社会科学分野 准教授
1963年千葉市生まれ。国際基督教大学教養学部卒。同大学院行政学研究科修士課程修了。防衛庁(当時)防衛研究所助手・主任研究官を経て、日本初かつ唯一の防災学部である富士常葉(とこは)大学環境防災学部の開学メンバー。教育・研究に加え、地域・社会・国際貢献を含めた3本柱が防災研究者とあるべき姿と思い定め、地域防災、国際防災協力、災害医療など、防災・危機管理に広く携わる。「トラメガ持ってボラセンを仕切った経験を持ち」「トヨタ自動車の防災・危機管理アドバイザー格」「内閣府・内閣官房などの委員も務める」が、論文は書かない(正しくは「書けない」)という、明らかに「規格外」の大学教員。災害図上訓練DIG(Disaster Imagination Game、ディグ)の考案者としても知られている。

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