バイオテロを防げるか
アメリカのロードアイランド大学でウイルスについて研究をされている竹田さんによる、日々の危機管理についてのコラムです。
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「シミュレーション、してみませんか?」
日本のバイオテロ対策は着々と進んでいますが、最大の問題は対策が医者や対策者の目で進められていることに難点があります。
事件後最も長期にわたって問題解決にあたるのは、医師でもなく、警察でもなく、さらには国でもなく、被害者本人です。テロが始まってどのように対処すべきか、あるいはそのどの扉を、あるいはどの電話番号を叩けば解決に向かう道筋になるか。テロ対策者は、迷路を歩き始めてしまう被害者の目で対策を考えていかなくてはなりません。そのためにはシミュレーションなくしてバイオテロを防げるとは思いません。
岩手医大の講演会前に、友人から「天然痘がテロで使われたらワヤ(えらい事)だよね」と聞かれましたが、自分は、もっと大きな問題があるんだよ、と話しました。「野兎(やと)病」とボソッと言うと、「え?野兎病が?」と彼は驚いていました。
この病気は主にはダニなどの媒介などによって引き起こされることが分かっていますが、実際はダニはそれほど必要はなく、場合によっては水や埃でも感染が広がりうる、ヒト-ヒトの感染も起こりうる、その上症状が重く、致死率も高い感染症です。実際に日本でも数件毎年発症者が出ているようですが、今、注目していかなくてはならない感染症だと思います。
野兎病は今まで大量の患者を出した経験は日本にはありませんが、間違いなく、複数の患者が出てきてしまうと医療関係者、警護などはパニックになってしまいます。それ以上に住民や患者周辺は大変な問題になります。
アメリカでは中南部、中西部において局在した感染報告があり、この地域では感染ホストを探していますが、未だによく分かっていません。治療方法は抗生物質が有効ですが、症状が出始めてから重篤になるまでの時間がそれほど長くないのも難点です。
さてテロ対策あるいは感染症対策には、訓練的なシミュレーションが必要であり、訓練を行う事でパニックを解消する事はできます。シミュレーションによって得られるのは、対策者の動きだけではなく、予期せぬ問題点や通常の業務では考えられないトラブルなどを見つけ出すことができます。
テロは犯罪行為ですので、シミュレーションのすべてを公開する必要性はありません。なぜならば、犯罪捜査を進める上で不利になり、また危険になりうるからです。ただし、ボランティアや住民が接する「訓練的要素」部分に関しては割り振って積極的に公開するべきです。
被害者は物言わぬ人形ではありませんし、めまぐるしく展開する中で不安が生じてきます。初動訓練に関しては最低限の公開はし、更に全般のケーススタディーは何度でも行うべきです。特にこのテロ対策は多くの省庁、地方団体が関わります。複数の組織が動く場合はどうしてもシミュレーションを否定しては動けません。
日本の悪い感覚は責任意識の欠如したリーダーにすがってしまうことにより、時間を浪費してしまう点にあります。その難点を克服するためには、辟易するほどのケーススタディーを基にしたシミュレーションが必要になります。
竹田 努(Rhode Island 媒介性疾病センター アルボウイルス研究主任)
平成7年 北海道大学大学院地球環境科学研究科生態環境学専攻博士課程(博士学位取得)
平成10年 Center for Vector-borne Disease,University of Rhode Island 博士研究員
平成12年 同 アルボウイルス研究主任














