安全・防災コラム

獣医さんからの防災アドバイス 00.12.23 16:20


「大切ペットを災害から守るには。8人の獣医からのアドバイス」

 いつ起こるかわからない災害から大切なペットをどう守ったらいいのか、そのための心構えや注意点など、東京都で開業している8人の獣医さんからのアドバイスです。

 これまでのペットレスキューの経験もお聞きしました。 (2000年12月アンケート調査実施)

●まずは人の命、そして次に命あるペットの救出が大切です
 私の所属している区獣医師会では区との協力により、災害が発生した場合には獣医師会の 指導の元にメンバーが手分けをしてペットの救出に当たり、保護をすることになっています。
 阪神大震災のときは私の病院でも犬を預かりました。三宅島のペットは区内の病院で手分けをして預かっています。子犬を預かった動物病院もありますが、預かり期間が長くなるとどんどん大きくなってしまいます。子犬の場合はちょくちょく面会をされないと飼い主を忘れてしまうことがあり、困ります。また、大型犬はなかなか預かってくれる先を見つけにくいので、その点をご理解いただき たいと思います。
   
●阪神大震災のとき、診療と入院管理にたずさわりました
 災害発生時のためには平常時から獣医師同士がつながりを持ち、ボランティアを登録制にしておくなど組織を整備すべきだと思います。災害は他人事ではないのですから。
 ペットは家族です。いついかなるときも最低1週間は生きていける食餌などはふだんから準備しておくことを飼い主さんは心がけてください。また、当たり前のことですが、ふだんから放し飼いはしないでください。

●雲仙普賢岳噴火のときに救護活動に加わった経験があります
 これからの災害発生に備えては、モバイル・パソコン・iモードなどを駆使して連携を取り、救急動物病院や災害時の無料ボランティア病院の案内、家族への伝言伝達をしてくれ るなどの協力体制を普及させる必要があると思います。ホームページを持つ動物病院が今 後この分野で果たす役割は大きいでしょう。 災害に見舞われた被災者はパニック・わがまま・心労に陥っており、通常では考えられな い思考をしてしまうことがあります。そんなとき、せめて自分のペットを一時預かってく れる人などがいればずいぶん気が楽になるはずです。そんな出会いのほうが、わずかな義 援金よりも重い意味をもつのかもしれません。

●三宅島噴火によるペットの避難に際し、受け入れの打診と準備を依頼されました
 しかし、私の病院は重篤な疾患の患畜が多く、入院室にまったくの空きがないこと、隔離病室がないため、既に入院している動物の防疫が不徹底になりかねないこと、またペットホテル業務を行っていないため受け入れ設備がないことを考慮し、残念ながら受け入れをお断りせざるをえませんでした。こういう病院があるということもご理解いただきたいと思 います。
 災害時にはどうしても人間優先になってしまうことは仕方がないとは思いますが、動物がないがしろにされてしまうことは悲しい事実です。理想論で言えば、動物も家族であるという考え方を、机上や建前だけのものではなく、しっかりと根づいたものにしておくことがまず大切ではないでしょうか。ふだんから動物とヒトの関係を健全なものにしておくことが根底になければ、しっかりとした災害対応は無理でしょう。
 具体的には、官を含め、獣医師会や愛護団体、動物関連の企業などで危機管理のマニュアル、特に初動態勢についての連絡経路や連携方法、対処方法などを準備することが望ましいと思います。
 また、飼い主さん側もふだんからそのような場合はどうするかを家族で一度は話し合っておくことが必要です。日頃からしっかりと健康管理をしておけばアクシデントにも対応しやすくなります。ふだ んの心遣いがペットの命を左右するのです。ワクチン接種などをしっかりと行っておけば 避難した施設での感染予防や他の動物への疾患の伝染を防ぐことができます。定期的に健康診断を受ける、しつけをきちんとするなど、飼い主さんとしての最低限のことを平常時から行ってください。
 万が一のためには、動物用防災グッズを準備しておくと役立ちます。保存の効くフードや飲用水、食器、リード、首輪、ケージやキャリーバッグ、鑑札もしくは名札、ぺットシーツ、タオル、使い捨てカイロ、常備薬や消毒薬程度の救急薬などです。

●災害発生時、個人動物病院においては緊急時の救済治療は可能ですが、継続的に保護していくことは困難だと私は考えています
 個人病院で保護するよりも、行政がシェルターなどを設置していただければ、獣医師はより協力しやすいと思います。
 災害が起こった場合、ペットは飼い主さんとはぐれてしまう可能性が高くなる場合もあるので、ペットの身元を示すタグなどを日頃からきちんと付けておくといいでしょう。 できればそのタグには、ペットの年齢、病歴、ワクチン接種の有無などが記されているとさらによいと思います。

●三宅島から避難してきた犬1匹と猫1匹を私の病院で預かっています
 飼い主さんはとて も優しい方で週に1回は必ず面会にいらっしゃっています。2匹とも高齢なのですが、元気で仲良く過ごしています。病院スタッフが買ってあげた専用ベッドでいっしょに寝ている姿はとてもほほえましく、ほとんど病院のペットといってもいい状態です。そんな状況にありながらも、私は本来は災害時の動物対応については公共機関が率先してやるべきだと考えています。獣医師会やボランティアに頼る現在のあり方には怒りを感じるほどです。こういう点でやはり日本の動物行政は後進国なのかと思ってしまいます。
 もし災害に見舞われたら、どんな場合でもペットは飼い主さんと同行避難することが原則 だと私は思います。できるかぎり、動物を置き去りにしないでください。飼い主さんがふだんから心がけるべきこととしては、個体識別ができる鑑札や名札などを必ず付けること、しつけをきちんとすること、ペットの生活用品の予備などを準備することです。

●三宅島から避難してきた犬と猫を私の病院でも預かり、いろいろなことを考えさせられました
 世の中いつなにがあるかわからないというのが実感です。 私自身も犬と猫を飼っており、誰に対してもフレンドリーで、言うことがよくわかるマナーをきちんとさせたいと努力しています。それができていないといざというときに受け入れてもらえません。このことは災害時にペットを預かる側になって特に強く感じました。ただ単にかわいいかわいいとわがままに育てるのは飼い主のエゴでしかありません。
 今回の三宅島噴火により東京都の動物保護相談センターに収容された猫たちにはかなりのストレスがかかったようで、のちに動物病院に移動したものが数多くありました。管理が行き届く動物病院は確かに最高の収容施設かもしれませんが、それでも避難生活が1ヶ月 以上にもなると、特に猫は自由に行動できないぶんストレスがたまって体調を崩しやすく なります。たとえば毛が抜けたり、嘔吐や下痢が続いたりといった症状を引き起こします。猫の場合は自由に行動できるような環境を作ってあげることでこれらの症状を改善することができます。被災された飼い主さんの生活が大変なのはわかりますが、あえて言わせていただければ、あまりにも身勝手な飼い主さんがいます。猫の食欲が落ちたことを伝えると「生魚なら食べるのに」と言います。それを買う費用はどうしたらいいのでしょうか。今回の三宅島への対応は私たちはあくまでもボランティアとして行っており、お金はもらっていないのです。何もかもアテにすることが当然のことになったら、こちらもつらいのです。そういうこともわかってほしいと思います。
 いちばん気になっているのは、行政が見せかけだけの動きをすることです。ペットを預かったはいいが、動物保護相談センターでは生きるための動物の管理がちゃんとできていません。悲しい事実です。シェルターを作ると言っていますが、それもきっと見せかけだけのものになるかもしれません。これも悲しい事実です。
 本当に動物がかわいそうと思ってくれる人は、行政の中にはいないのでしょうか? 動物を好きな人はいないのでしょうか? 疑問に思います。飼い主さんが避難している場所にいっしょにペットがいられないということは、ペットも飼い主もお互いにつらいことです。
 東京都は、三宅島の人のために用意した住居にペットの同居を認めていません。災害時の特例という考えはないのでしょうか? こういうときに特例がないということは、政治は真っ黒だということです。いろいろなことを避難している人たちが仲間と話し合い、行政に要望を出すといいと思います。みんなが歩み寄る必要があります。

●雲仙普賢岳噴火のときと阪神大震災において獣医師仲間を派遣するための資金援助をした経験があります
 今回の三宅島噴火については避難してきた大型犬を預かっています。うるさいくらい元気 いっぱいで暮らしています。自分自身が被災した場合どうなるかはわかりませんが、私の病院施設が健全な状態なら、被災ペットを収容するなどの協力はする体制です。東京都獣医師会でも、会としてのシステム作りをしているところです。災害発生時にはまずは人の安全確保をし、それから動物にも救済をという考えです。そのためにも、日頃から万が一に備えてシュミレーションをしておくことが大切だと思います。
 
―災害は、人間だけでなくペットの日常をも非日常に変えてしまいます―
 ふだんからの備えがいかに大切かを獣医さんはアドバイスしています。基本のしつけをすることやペットを飼うマナーを守ることも備えのうちです。飼い主のふだんからの心がけが、大切なペットを災害から守る最大のポイントです。

※この記事は、2000~2004年頃の「rescuenow.net」に掲載されたものを再掲載したものであり、登場する団体名等は執筆当時のものです。

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