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だからやるんです!(2)
有珠山ネットは民主的な社会ではない。
全員の意見など尊重はされない。ただし、実質的に仕事を取り仕切っている人間の発言は絶対の重みを持って迎えられる。
それぞれが置かれている状況はみな違う。その中で、みんながベストを尽くしているのは、これは疑うことのない事実である。実力よりも、具体的な仕事量がものをいうのだ。実力のあるものは、ほかの人の仕事を仕上げる。お互いに欠けている部分を相互補完する。それが自然にできる集団である。
で、5月5日の夜に、初めての会合を持った。冨田がとりあえず一番前に座ってメンバーと対峙する形で行われたものの、いわゆる「労使」関係でもなければ、上下関係でもない。
有珠山ネットの絶対的なおきてがある。「言いだしっぺが班長」。言った分はやっていただく。やれないのだったら言うな。ということだ。
こいつはかなりきつい。
つまり冨田が隊長と呼ばれる理由はこの一点にのみある。
冨田がおっぱじめた仕事なんだから、おまえが隊長だという論理である。そいつがその職にふさわしかろうが、そんなことは関係ないのである。足りない部分はよってたかって何とかしてしまうのである。で、何とかしていただいているうちに、引き受けた人、たとえば冨田にしたところで、いつまでも馬鹿ではいられるはずもなく、その職にふさわしい人間になろうと努力だけはするのである。
「うすこい」が終わったその日に、七夕祭り・・・たんざく・・・と、一言発言したがために、村さんは引っ込みがつかなくなって、「うすこい」で使いすぎたハードディスクがお釈迦になったにもかかわらず、「うすゆめ」の班長を自らかって出たのである。えらいというか、ご愁傷様というか、ちょっと言葉がない。
断っておくが、メンバーは決して暇人ではない。お金持ちというほどのこともない。どちらかというと、世間ではかなり激務に属する人が多い。
それぞれ抜群のスキルがある。いわゆるプロの集団である。プロの集団だから、それぞれが一人前で、それにふさわしい仕事を同時に進められるのである。見事というほかない。
多くの組織が、組織であるがゆえにつぶれたり腐ったりする。
なんでか。
答えは簡単なことである。組織である以上は、それを守ろうとするからだ。組織とはそういうものである。上下関係で縛られる。そこには金銭の関係がなくてもである。
有珠山ネットはそこが根本的にこれまでの組織とは違う。
規約を定めて、会費をきちんと払う人だけを会員とみなすというふうに決めたとしたら、恐らくほとんどみんなやめるであろう。冨田自身がいやになるに違いない。紙に書かれた規則やら、規律やらそんなものに縛られる理由はない。
やりたいからやるのだ。好きだからやるのだ。友達がやってるから手伝うのだ。
それが結果として、被災者のためになるというだけのことである。そここそがこの仕事の本質であろう。やりたいやつが、やりたいことを、やれるだけ、本気になってやる。それだけのことである。そこには組織など必要さえない。
そこに困っている人がいて、分断され尽くした町があって、家に帰ることができない人々が5000人以上いまだにいて、職をなくした人も1000人以上いて。そういう人がそこにいるのを、「残念ながら」見過ごしにできない人間が、やりたいことを、やれることを軸にして集まった集団が有珠山ネットである。
この時代にあっては、まあ、ウスラバカでさえある、いとしい仲間たちである。
メンバーの多くは、恐らくはボランティア活動をしているとは思っていないのではなかろうかと、冨田はそう思っている。冨田自身もやってることがボランティアだなどと考えてもいない。先ほども書いたように仕事である。何をおいても、時には睡眠不足になって次の日が地獄になろうとも、やらねばならないことはやるのである。やらなかったら、えらいことになるのである。
冨田にとっては、あるいは多くのメンバーにとって、有珠山ネットは、ホームベースにさえなってきたようだ。ここでならば、何でもあり。
言いだしっぺがケツを持つ覚悟さえあれば、どんなことだってできる。それほどの力を、冨田はうれしくもあり、少々おっかなくもあるのである。
いずれにしても、はじめてしまったものはしょうがない。どうなって行くのか、お楽しみである。みなさんも、事の成り行きをどうぞお楽しみいただきたいのだ。
大丈夫!
骨はみんなが拾ってくれるさ。

2000年5月21日
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2000年3月31日、有珠山が噴火しました。有珠山噴火災害に関して、過去のどの災害とも大きく異なっている点がありました。それは、本格的な「インターネットによる全国的な情報ボランティアネットワーク」の誕生。「被災地からの、市民の、市民による、市民のための情報発信」というこれまでに無かった活動を、インターネットを通じて日本全国から集まった有志達が、陰ながら支えるという重要な役割を果たしています。そのため、今後の災害時の市民情報発信の在り方を考える上でも非常に重みのある活動となっているのです。これは、この「有珠山ネット
」の立ち上げに深く関わり、自ら「隊長」として代表を務める冨田きよむ氏によるコラムです。
※この記事は、2000~2004年頃の「rescuenow.net」に掲載されたものを再掲載したものであり、筆者の所属や登場する団体名等は、このコラムの執筆当時のものです。














